【口頭発表】エステル系絶縁油への油交換時の油中水分挙動

<概要>
絶縁油の諸特性(酸価、体積抵抗率、絶縁破壊電圧、水分)が管理基準値を超過した際の処置として油交換等が行われる。しかし、油交換によって得られる絶縁油の諸特性改善効果は、体積抵抗率・酸化に限られ、油中水分量は一時的な改善効果しか望めない。なぜなら、変圧器内の水分は、そのほとんどが巻線、プレスボード等の固体絶縁物中に存在するため、絶縁油中の水分を取り除いたとしても、油と絶縁物の水分平衡によって油交換前と同程度の水分量に至る。また、絶縁破壊電圧は、油中水分の減少に伴って一時的に改善するものの、油中水分が油交換前の状態に戻る過程で再び低下する。
現在日本国内で一般的に使用されている変圧器には鉱油が充填されており、油交換の際も同油種が用いられる。近年、エステル系絶縁油(エステル油)の使用が世界的に広がってきており、鉱油の代替としての利用が盛んに行われている。エステル油は水分溶解性が鉱油よりも高く(10~20倍)、エステル油を用いた油交換では、固体絶縁物中の水分が除去され、変圧器内の水分量を低減できる可能性がある。
そこで本報告では、エステル油の油交換による絶縁油の諸特性改善効果を検証するため、吸湿状態となった油入り変圧器を模擬した試験系を構築し、鉱油およびエステル油を使用した油入り変圧器で油交換処理を実施した際の水分と絶縁破壊電圧の挙動について検証した。


実験の様子

2020年10月16日に開催された石油学会第40回絶縁油分科会研究発表会にて発表。

タイトル:
「エステル系絶縁油への油交換時の油中水分挙動」
著者:
後藤隆行, 佐藤学, 長谷川真之, 太田延幸(ユカインダストリーズ)

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