【論文】量子化学計算による脂肪酸エステルのTHzスペクトル推定

<論文概要>
テラヘルツ(THz)分光法は、分子の三次元構造や分子間相互作用など物質に対する新しい情報が得られる可能性があるため、注目されています。THz帯の吸収は複雑で、その詳細な解釈は研究途上にあります。本研究では、エステル系絶縁油の基油としても用いられる脂肪酸エステルについてTHz帯の吸収を調べ、量子化学計算によって評価しました。その結果、脂肪酸エステルのTHz吸光は、分子の立体配座(分子鎖の曲がり具合などによる立体的な構造の違い)分布が大きく影響することがわかりました。そこで立体配座分布をボルツマン分布によって考慮し、量子化学計算によって計算したところ、実測のスペクトルとよく一致することがわかりました。

下図は、IR帯とTHz帯の分子振動の特徴を比較している。IR帯は、カルボニル基部分が局所的に振動しているのに対して、THz帯は、分子全体が振動している様子がわかる。THz帯のスペクトルでは立体配座の影響を大きく受ける要因の一つと考えられる。

IR帯の振動の例(1750cm-1付近)

THz帯の振動の例(300cm-1付近)

電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌) Vol.139 No.4 pp. 234-241(2019年)
タイトル:
「量子化学計算による脂肪酸エステルのTHzスペクトル推定」
著者:
加藤雅道(ユカインダストリーズ)
松本聡(芝浦工業大学)
DOI:
https://doi.org/10.1541/ieejfms.139.234

詳しい内容については、営業部までお問合せください。

お問い合わせ

ユカインダストリーズへのお問い合わせ・資料請求のご依頼は、お電話もしくはメールフォームより承っております。 お気軽にお問い合わせください。

03-5741-1721(営業部)

お問い合わせ受付時間:8:30~17:30
定休日:土・日・祝日

関連記事