フルフラール分析とは

変圧器絶縁油中のフルフラールを分析することによって、変圧器の劣化度合いを推定する診断方法です。変圧器の部品のうち、巻線絶縁紙は金属部品などと異なり、経年劣化します。また絶縁油のように容易に交換ができないため、変圧器の劣化は、巻線絶縁紙が劣化し、引張強度が低下することと言われています。巻線絶縁紙は、稼働中に採取できないため、稼働中の変圧器の絶縁紙の劣化度合いは、直接評価できません。代わりに油中のフルフラール、アセトン、CO・CO₂などの絶縁紙が分解した際に生成する物質の量から、変圧器内の巻線絶縁紙の劣化度合いを推定します。

フルフラールの化学構造

絶縁紙の劣化生成物は、様々な物質がありますが、一番よく利用されている物質がフルフラールであり、一般にフルフラール分析というと変圧器の劣化度診断のことを指すことがあります。以下に変圧器の寿命の考え方と経年劣化度診断の原理を説明します。

変圧器の寿命

変圧器は長年の使用によって内部の材料が徐々に劣化し、絶縁性などの性能を保てなくなると寿命を迎えます。
材料の中で劣化による影響が大きい有機物材料の中で、絶縁油は交換可能であるのに対し、紙材料は交換できないため、変圧器の寿命において特に重要です。
中でもコイル絶縁紙は、使用部位の温度が高く、熱劣化の影響を受けやすいことから、プレスボードなど他の紙材料に比べ、影響が大きいと考えられます。
このことから、コイル絶縁紙の劣化が、変圧器の寿命を決めると考えられています。
コイル絶縁紙が劣化すると機械的強度が低下して、巻線に外部短絡などのサージ電流が流れた際に発生する電磁機械力に耐えられなくなります。
絶縁紙の破断は、重大な事故の原因となりますので、サージ流入時などの電磁機械力に耐えられない程まで絶縁紙の機械的強度が低下した点が変圧器の寿命点と考えられています。

絶縁紙の平均重合度測定

コイル絶縁紙の機械的強度は、引張強度測定によって評価できます。しかし、コイル絶縁紙は、導体に巻かれているため、実器から採取した場合、巻きぐせがついています。
この状態で引張強度測定を行った場合、巻きぐせが測定値に大きく影響を与えます。
一方、平均重合度測定は、紙を化学的に処理して、その紙を構成する分子の長さ(モノマー数)を評価する方法で、この値は、紙の引張強度と相関があることが知られています。
この方法は、巻きぐせの影響を受けずに、紙の引張強度を評価できることから、絶縁紙の劣化度評価の基本的尺度に用いられます。
絶縁紙の寿命については、報告されている文献を調査した結果の平均的な値から、平均重合度450が推奨されています。

絶縁油中成分の分析による劣化度評価

稼働中の変圧器から、直接絶縁紙を採取し測定することは通常できません。そこで経年劣化度診断では、絶縁油中に溶けだした紙の劣化生成物の量を分析し、変圧器の劣化度を評価します。
絶縁紙はセルロースという物質で構成されています。
セルロースは、変圧器内で熱や酸素、水分の影響を受け、CO₂やCO、フルフラール、アセトンなどの劣化生成物を生成します。
絶縁油中に溶け込んだこれらの劣化生成物を分析し、コイル絶縁紙の平均重合度を推定することで変圧器の劣化度を診断します。

図1 セルロースの劣化生成物

経年劣化度診断

図2は、経年劣化度確率表示診断図と呼ばれる経年劣化度診断で使われる診断図です。
フルフラール量とコイル絶縁紙の平均重合度は、相関関係があり、平均重合度が低下するとフルフラール量が増加する傾向があります。
図2の右下がりの2本の直線は、実際の変圧器を調査した結果のばらつきの範囲を示しています。
例えばフルフラール量が0.0015mg/g(紙)であった場合、平均重合度の範囲は、おおよそ450から800の範囲であると予測されます。変圧器の寿命は平均重合度450を下回った時であるとされていますので、フルフラール量から推定した平均重合度の範囲から、どのくらいの確立で平均重合度450を下回るか示したのが、この経年劣化度確率表示診断図です。図のパーセンテージは、平均重合度450を下回る確率を示しており、この確率から劣化度を診断します。

図2 経年劣化度確率表示診断図

変圧器の余寿命診断

図3は、変圧器の運転年数とフルフラール量の関係を示しています。
運転年数に伴ってフルフラール量も増加していく(劣化が進行していく)様子が見て取れます。
フルフラール量の増加傾向は、その機器ごとに異なっておりますが、定期的に分析を行うことで、その機器のフルフラールの増加傾向(曲線)が分かり、劣化の進行が予測できます。
図の例では、およそ3年後に寿命点に達することが示されており、機器の更新の検討に入る必要があると言えます。
このように定期的に分析を行うことで現在の機器の劣化度や劣化の進行具合の予測が可能となります。

図3 ある変圧器の運転時間とフルフラール量の関係

この経年劣化度診断はすでに3万台以上の実績があり、変圧器の余寿命の推測や更新計画などに活用いただき、多くのお客様から高い評価をいただいております。

変圧器の油劣化方式と利用できる劣化指標物質

当社では、通常、フルフラールとCO₂・COを測定し経年劣化度診断を行います。
しかし絶縁油劣化防止活性アルミナ(アルソ)を使用している場合、フルフラールがアルソに吸着されてしまうため正しく診断できません。
この場合は、フルフラールの代わりにアセトン分析によって診断を行います。アルソを使用している場合、必ずその旨お伝えくださいますようお願いいたします。
ご不明な点がございましたら、お問い合わせくださいますようお願いいたします。

経年劣化度診断関連社外発表紹介

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油入電気設備保守・保全に必要な絶縁油分析項目をお客様にわかりやすくしたセットにてご依頼を受け賜わっております。

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【内容】
<経年劣化度診断と異常診断の結果を判定・診断し、ご報告いたします>
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変圧器内の絶縁紙劣化度を絶縁紙劣化生成物(フルフラールまたはアセトン)測定から推定し、余寿命を予測します。
油中ガス分析で変圧器内の放電や過熱などの異常を確認できます。
一般特性試験の結果から絶縁油の劣化の有無を調べます。

【測定項目】
経年劣化度診断(フルフラールまたはアセトン分析)
油中ガス分析
水分量
■ 一般特性試験6項目(絶縁破壊電圧 体積抵抗率 酸価 密度 動粘度 引火点)

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