変圧器解体調査

当社では、更新時期を迎え解体される変圧器の実際の劣化状況などの調査のお手伝いをさせていただいております。解体作業への立合いはもちろん、適切な試料採取箇所や分析・解析方法についてもご提案させていただきます。

変圧器解体調査の目的
油入変圧器に使用されている巻線絶縁紙は劣化しても交換が困難なため、巻線絶縁紙の劣化が油入変圧器の寿命を直接左右すると考えられています。また日本電機工業会規格JEM1463において平均重合度(DP)450(平均重合度残率40%、引張強度残率60%相当)が絶縁紙の寿命の目安であると記されています。
巻線絶縁紙の劣化状態は油入変圧器から絶縁紙を直接採取し、劣化状態を評価することが望ましいのですが、稼働中機器から絶縁紙を採取することは通常困難です。そこで、絶縁油中に含まれる絶縁紙劣化指標成分(CO2+CO、フルフラール、アセトンなど)を測定し、生成量と劣化度との関係から絶縁紙の経年劣化度を診断して変圧器更新の目安としています。

ただし、劣化指標成分生成量と絶縁紙の劣化度合いの相関は変圧器の型式、使用部材、使用状況等により異なり、変圧器の劣化状況を精度良く推定するためには、ユーザー個々に判定値を調整する必要があり、そのためには変圧器の解体調査が必要となります。
変圧器の解体調査では内部の詳細な観察や破壊的な検査を実行でき、変圧器の状態に関する最も決定的な結果が得られます。また油分析による経年劣化度診断と実際の劣化度合いを比較することができ、このデータを蓄積することで経年劣化度診断の確度が向上し、更新変圧器の順序付けと更新時期の目安をより詳細に検討できるようになります。

変圧器からの試料採取箇所および解析結果の例

解析項目の例

  • 平均重合度(DP)
  • 引張強度
  • 紙種判定 など

導体には数枚~十数枚の絶縁紙が巻かれており、通常は導体の発熱が最も伝達されると考えられる最内層の絶縁紙のDPを測定します。得られたDP測定値について半径方向、垂直方向、3相の間で比較し、変圧器内のDP分布を評価します。次に解体調査で判明したDP最低値と油分析による劣化指標成分生成量を経年劣化度診断グラフにプロットします。また、運転年数に対するDP最低値の関係図や運転年数に対する劣化指標成分の生成速度の関係図を作成することにより変圧器の余寿命を推定でき、適切な更新計画に資するデータとなります。

解体調査は変圧器内部材料の直接的な測定により経年劣化度診断だけでなく変圧器の設計と構造に関する情報を取得することができる貴重な機会です。変圧器更新を計画される際には撤去品の調査も含めご検討ください。

絶縁材料の劣化評価試験

加速劣化試験による絶縁材料の劣化評価

変圧器に使用される絶縁材料は、運転中の熱や水分、酸素などにより劣化を受け、徐々に絶縁特性が低下します。また、新規な材料を適用する場合、絶縁油との相互作用により思わぬトラブル(異常なガス発生、材料特性の悪化、色相変化など)を引き起こす事があります。絶縁材料の劣化評価試験では、温度や雰囲気をコントロールした条件下、絶縁油中で絶縁材料を加熱し、変圧器内部での劣化現象を模擬することで、絶縁材料の劣化傾向の把握や絶縁材料と絶縁油の適合性を評価します。この際、温度条件を通常の使用温度よりも高く設定することで劣化を加速させ、数年から数十年の劣化を短期間で評価します。(加速劣化試験)
当社では、各種条件(雰囲気:N2・Air、油中・気中、材料中の水分量コントロールなど)での劣化試験が可能です。評価項目に応じた最適な試験方式をご提案いたします。試験に適した加熱炉や加熱容器を保有しておりますので、ご要望に応じた条件での劣化試験が可能です。

試験設備と試験条件の例

SUS製容器C(小型)シール性良好,堅牢(耐熱150℃),容量(内部体積:約200 ㎤)
真空注油可能

加熱炉 6台保有(最高使用温度150℃)150℃以上は要相談
雰囲気 各種ガス(N2,Airほか)による密封
大気開放(~120℃)
加熱容器 特徴
SUS製容器A 高気密性,堅牢(耐熱150℃以上),大容量(内部体積:約1250 ㎤)
真空注油可能,絶縁油試験項目を一通り実施可,油中ガス分析にも対応
加熱時の圧力上昇緩和機構の設置可
SUS製容器B 高気密性,堅牢(耐熱150℃以上),大容量(内部体積:約1250 ㎤)
真空注油可能,絶縁油試験項目を一通り実施可,油中ガス分析にも対応
加熱時の圧力上昇緩和機構の設置可
バイアル瓶 扱い容易,シール性良好,耐熱(実績)150℃以下,容量(20~100 ㎤)
多数のサンプルを同時に仕込みかつ1台の加熱炉で多サンプルを加熱処理
シリンジ 扱い容易,シール性にやや難,耐熱120℃以下,容量(50㎤)
上部空間なしで仕込み可(空間が無いため油中ガス分析に最適)
加熱試験後の材料の評価

加熱劣化試験後の材料について各種評価項目を試験し、絶縁油特性に影響しない事、および絶縁材料自体に異常な劣化が生じていないかなど評価いたします。

評価項目の一例

  • 絶縁油:酸価・体積抵抗率・絶縁破壊電圧・水分・スラッジ・色相 など
  • 絶縁紙:平均重合度・引張強度・紙中水分 など
  • ゴム・樹脂:各種物性評価
  • 金属材料:金属表面観察 など
  • 異物が生じていた場合:異物の定性分析
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